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新約聖書のエッセンス

☆4福音書



新約聖書の冒頭に4つの福音書があります。

「福音」とは、「良い知らせ」という意味です。

どんな「良い知らせ」かと申しますと、神様が、私たち人間を罪と滅びから贖(あがな)うために、御子イエス・キリストをこの世に送り、十字架の身代わりの死によって、人の罪を赦し、すべての人に無代価の救いを提供して下さった、という知らせです。


○なぜ「4」(つの)福音書なのか

 これは、多くの人々がいだく疑問の一つでしょう。

なぜ、「・・・による福音書」という、同じタイトルの書が4つ必要なのでしょうか。 1つで十分なのではないでしょうか。

 この質問に対して、完全に答えることは、やさしくありませんが、少なくとも、以下のことは言えるかと思います。

(1)神様が、4つ必要とお考えになった。

(2)神の偉大な救いを、一人の人が、完全に表現することは不可能   


  である。 それで、神は、個性も背景も異なる4人の著者それぞ


  れに霊感を与えて、4つの福音書を書かせられた。


 今、ここに一人の偉大な人物がいるとします。

 彼には、多くの友人がいましたが、特に親しい4人の友がおりました。その中の、1人が、この偉大な人物のすべてを表現することは難しいことです。 それで、あと3人の友人にも、この人物について感想を述べてもらうことになりました。 そしてわかったことは、この一人の同じ人物について、4人が、それぞれ異なった角度から捕えており、それらを合わせると、この偉大な人物の全体像がより明確になったことでした。

 「4福音書」も同じように考えることができると思います。


■マタイによる福音書

 「アブラハムの子孫、ダビデの子孫、イエスキリストの系図」

      (新約聖書マタイによる福音書1章1節、新改訳聖書)

 口語訳聖書や、新共同訳聖書は、「アブラハムの子、ダビデの子」と翻訳していますが、「子」という言葉は、「子孫」と訳すこともできます。

 このあとに続く、カタカナの羅列ー、これは、聖書を初めて読む人の多くが、「聖書を敬遠するよう」になる、新約聖書の第1ページの導入部分です。

 でも、マタイが、この長々しい系図を最初に持ってきているのには、実は、深い意味があるのです。

 マタイが、彼の福音書を通して、一貫して強調しているのは、イエス・キリストが、旧約聖書に預言されていたメシア(救い主)である、ということです。

 マタイは、旧約聖書に預言されていたことが、実際に成就(実現)したのですよ、と、繰り返し、述べています。彼は、旧約と新約の「橋渡し」を、自分の使命と考えていたようです。

 ユダヤ人たちは、「キリスト教」は、自分たちとまったく関わりのないものと考える傾向がありました。しかし、彼らが、マタイによる福音書を読むと、その疑問が解けたのです。この意味で、マタイによる福音書は、ユダヤ人のための福音書であるといっても過言ではありません。 マタイはまた、キリストを偉大な教師、真理のすぐれた解説者として描いています。


■マルコによる福音書

 マルコによる福音書は、「原福音書」などと呼ばれることがありますが、4つの福音書の中で、最初に書かれた福音書です。4つの福音書の中で、最も短い16章から成っています(ちなみに、マタイは28章、ルカは24章、ヨハネは21章)。

 「神の子イエス・キリストの福音の初め」(マルコ1章1節)の書き出しからも想像できるように、マルコは、イエス・キリストを偉大な神の子、また、力ある神のわざの実践者として紹介しています。


 それを裏書きするように、マルコは、イエス・キリストが行われた数多くの「奇跡」を記録しています。


■ルカによる福音書

 ルカは、4福音書の中で、唯一の「異邦人」でした。彼はまた、医師であり、すぐれた歴史家でもありました。

 ルカは、キリストを「万人の友」また「罪びとの友」として読者に紹介しています。初めて福音書を読む人や、異教社会に生きる日本人にとって、最も親近感を覚える福音書と言えるでしょう。


 ルカによる福音書は、また、「女性の福音書」とも呼ばれ、当時、社会的地位の低かった女性に特別な地位を与えています。

 ウィリアム・バークレーは、ユダヤ人の男性が、神が自分を「異邦人や奴隷や女」に造らなかったことに対して神に感謝をささげたと述べていますが、ルカは、そのような偏見に真っ向から挑戦したのです。

 ルカは、彼の福音書の冒頭に、キリストの先駆者となったバプテスマ(洗礼者)ヨハネの母エリサベツや、イエスの地上の母として神から選ばれたマリアを紹介しています。

 またルカだけが、息子を亡くして深い悲しみの中にある寡婦について述べています。そして、キリストは、息子を復活させて彼女にお返しになったのでした。

 イエスの足に香油を塗った罪深い女性(マグダラのマリア)の高貴な献身について、最も詳細に述べているのも、ルカです。

 神が、人生の苦難に翻弄される人間一人一人に、どんなに深い憐みを抱いておられるかを、キリストの生涯を通して語りかけているのもルカの特徴です。

 「祈り」について、多くを述べているのも、ルカによる福音書の特徴です。


■ヨハネによる福音書

 これまで見てきましたマタイ、マルコ、ルカの3つの福音書は、普通、「共観福音書」と呼ばれています。それぞれの特徴や記述の違いは多少あっても、キリストの生涯について、その誕生やたとえ話など、似通った観点から書かれているためです。


 ところが、4つ目の、「ヨハネによる福音書」は、さきの3つとは、全く性格を異にしており、「鷲の目をもって書かれた福音書」とか、単に、「第4福音書」として区別されています。

 その書き出し、「初めに言があった」は、あまりにも有名です。

ちなみに、日本語で最初に訳されたのは、このヨハネによる福音書でした。それは、以下のようになっています。「ハジマリニ カシコイモノゴザル コノカシコイモノゴクラクトモニゴザル コノカシコイモノワゴクラク」(ギュツラフ訳)。

 ヨハネによる福音書は、キリストを通して現わされた神の愛の繊細さ、美しさ、神の御性質の深い憐みと恵みなどが、生き生きと描かれています。 聖書中の聖書と言われて親しまれ、多くの人々の慰め、励ましとなってきたヨハネ3章16節は、キリストに「愛された弟子ヨハネ」だけが記録した名言です。

 『神はそのひとり子を賜った(お与えになった)ほどに、この世を愛して下さった。それは御子を信じる者がひとりも滅びないで、永遠の命を得るためである』[口語訳 ※注 (  )内は、新共同訳]。


このように、4つの福音書は、それぞれ霊感を与えられた4人の記者が、その個性の中で、神の偉大な福音を書き記した記録です。

皆様も、是非、その共通点や相違点なども比べながら、福音書を楽しまれますよう、お勧めいたします。

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